「塀はまだしっかりしているし、この上にフェンスを足せば目隠しになる」。見た目にひび割れもなく、傾いてもいない。そう思えるブロック塀なら、上に載せるだけで済みそうに見えます。
先にお伝えします。載せられるかどうかは、外から見るだけでは決まりません。国が示す点検の手順そのものが、外から見る第一段階と、ブロックを一部取り外して中を見る第二段階に分かれているからです。
この記事を読めば、自分で確認できる5点と、専門家でないと分からない3点の線引きが分かります。載せられなかった場合に選べる道と、業者に見てもらう前に用意しておくものも整理しました。
ブロック塀の上にフェンスを載せられるかの判断
今あるブロック塀の上にフェンスを載せられるかは、外から見るだけでは決まりません。国が示す点検の手順そのものが、外から見る段階と、ブロックを一部取り外して中を見る段階に分かれているからです。
外から見て分かるのは5項目、壊さないと分からないのは3項目です。
点検は外観と内部の二段階に分かれている
国土交通省が2018年6月21日に出した通知(国住指第1130号)の別紙2は、ブロック塀の点検を第一段階と第二段階に分けました。第一段階は「外観に基づく点検」で、高さ・厚さ・控壁・基礎・傷みの5項目です。
第二段階は「ブロック内部の診断」で、通知には「ブロックを一部取り外して」確認すると書かれています。難易度の違いではなく、壊さないと見えないかどうかの違いです。同通知は第二段階について「建築士、専門工事業者等の専門家の協力を得て診断することが望ましい」としています。
順番も決まっています。国土交通省の一般向けチェックポイントは、外観の5項目をまず見て、「ひとつでも不適合がある場合や分からないことがあれば、専門家に相談しましょう」という流れです。外観チェックは危険を見つけるための足切りであって、安全だと証明する道具ではありません。
自分で確認できる外観の5点
第一段階の5項目は、メジャーと目視だけで確認できます。同通知の別紙2に沿うと次のとおりです。
| 確認する項目 | 基準 | 確認のしかた |
|---|---|---|
| 高すぎないか | 補強コンクリートブロック造は2.2m以下、石やれんがを積んだ塀は1.2m以下 | 地面から塀の一番上までをメジャーで測る |
| 厚さは十分か | 10cm以上。塀の高さが2mを超えるなら15cm以上 | 塀の端や門まわりの切れ目で厚みを測る |
| 控壁があるか | 高さ1.2m超なら、長さ3.4m以下ごとに、塀の高さの5分の1以上を突き出させた壁 | 塀に沿って歩き、突き出した短い壁の間隔を測る |
| 基礎があるか | コンクリートの基礎が地面から見えているか | 塀の足元を見る |
| 傷んでいないか | 老朽化・亀裂・傾き・ぐらつきがないか | 目で見る。傾きは離れた位置から見る |
控壁は、塀が横向きに倒れないよう直角方向へ突き出させた短い壁のことで、建築基準法施行令第62条の8第五号に定められています。この第62条の8はブロックを積んだ塀についての条文なので、求められるのは高さ1.2m超のブロック塀です。
5項目のうちひとつでも引っかかれば、上に何かを載せる話ではなくなります。傾きやぐらつきのある塀は、フェンスより先に塀そのものをどうするかの判断になるからです。
専門家でないと分からない3点
第二段階の3項目は、道具があっても塀を壊さずには確定できません。通知の別紙2が挙げているのは次の3つです。
- 鉄筋の接合方法と、モルタルが中まで詰まっているか(施行令第62条の6)
- 鉄筋の間隔と、基礎への定着(鉄筋が基礎の中へどれだけ入って留まっているか)の状況(同 第62条の8)
- 基礎の根入れ(基礎が地面の中に入っている深さ)(同 第61条または第62条の8)
「鉄筋なら機械で調べられるのでは」と思うかもしれません。壊さずに調べる方法はあり、次章で何が分かって何が分からないかを整理します。先に結論だけ言えば、機械で測れるのは鉄筋の「あるかないか・何本か・どれくらいの間隔か」までです。
世田谷区の資料も、基礎の確認には「基礎の部分を掘って調べる」、内部の点検には「部分的な取り壊しが必要となります」と書いています。自分で確認できるのは第一段階まで、と考えてください。
ここがこの記事でいちばん覚えて帰っていただきたい線引きです。業者が現地を見ただけで「大丈夫です」と言ったなら、それは外観の範囲での見立てかもしれません。何を見てそう言っているのかを、その場で聞きましょう。
外から見えたものと解体して分かったもの
外観チェックの限界は、実際に起きた事故の調査報告書に記録されています。高槻市が設置した調査委員会の報告書は、倒れた塀について「外から測れたこと」と「解体して初めて確定したこと」を分けて書きました。
外から測れたのは高さ・厚さ・控壁の3項目で、うち2項目が基準を外れていました。解体して初めて確定したのは4項目です。
高槻市の事故で外観から分かったこと
外から測れたのは、高さと厚さと控壁の有無まででした。2018年6月18日の大阪府北部の地震で、高槻市立寿栄小学校のプールの塀が倒れています。
高槻市学校ブロック塀地震事故調査委員会の調査報告書によれば、この塀は1974年にプールの建設と同時に造られたものです。ブロックの壁の高さが1,600mm、下の擁壁(土が崩れないよう留めるコンクリートの壁)が1,900mm、合わせて道路面から3,500mm。ブロックの厚さは150mmで、控壁はありませんでした。
前章の外観5項目のうち、2つが基準を外れていたことになります。外観チェックは、この塀について「専門家に相談してください」という答えをきちんと出せる状態でした。裏を返せば、外観で分かったのはここまでです。
解体して初めて確定したこと
中の状態は、外からは一切見えないものでした。報告書が記録している内容を整理します。
| 分かったこと | どうやって確認したか | 法令との関係 |
|---|---|---|
| 鉄筋の径が8mmを上回らなかった | 解体撤去後の壁から、錆びで細っていない鉄筋6本を無作為抽出して計測 | 施行令第62条の8が求める径9mm以上を満たしていない |
| 縦筋をブロックの空洞の中で継いでいた | 解体後の調査 | 施行令第62条の6第2項は空洞部内での継手を禁じている |
| 擁壁とつなぐ鉄筋に、著しく錆びて細ったものがあった | 同上 | 倒壊時、この鉄筋はすべて破損していた |
| 擁壁の中へ鉄筋が入っている長さが足りなかった | 擁壁の側面から直径75mmの穴を開けて端部を露出させ、測定 | 定着の不足 |
鉄筋の間隔そのものは縦横とも400mmで、施行令が求める80cm以下を満たしていました。次のH3で触れる鉄筋探査機で分かるのは、まさにこの「有無・本数・間隔」です。探査機で調べれば「鉄筋は400mm間隔で入っています」という結果になったはずですが、径も継ぎ方も錆びもそこからは出てきません。
定着の長さを測るために、擁壁の横から直径75mmの穴を開けている点にも注目してください。壊さなければ測れなかったということです。
報告書は、この塀の「構造検討及び詳細を示す資料」と「法定点検時の劣化状況を示す資料」が存在しなかったことも記録しています。3年ごとの定期点検を受けていた公共施設でも、造ったときの記録が残っていませんでした。
ひとつ、そのまま重ねてはいけない点があります。この塀は学校のプールの塀で、擁壁の上に載り、道路面から3.5mありました。一般の家の境界にある高さ1.2m前後の塀とは条件が違います。
受け取るべきなのは「同じことが起きる」ではなく、「外観で分かることと、解体しないと分からないことの間には、これだけの距離がある」という事実のほうでしょう。
鉄筋探査でも分からないもの
鉄筋探査機で分かるのは鉄筋の有無・本数・間隔までで、かぎ掛け・定着の長さ・基礎の根入れ・モルタルの詰まり具合は分かりません。
| 方法 | 分かること | 分からないこと |
|---|---|---|
| 鉄筋探査機(電磁誘導法・電磁波レーダー法) | 鉄筋の有無、本数、間隔 | 鉄筋の先のかぎ掛け(先端をフック状に曲げて留めてあるか)、基礎への定着の長さ、基礎の根入れ、モルタルの詰まり具合 |
| 方位磁石を近づける | 鉄筋がありそうかどうかの目安 | 上記すべてに加えて、本数・間隔・径 |
方位磁石の方法は、一般社団法人全国建築コンクリートブロック工業会が一般向けの解説で紹介しているものです。ただし同会自身が、この診断結果は「あくまでも目安」であり、正確さを期すには専門家による精密診断が必要だと書いています。
同会は、塀を手で押して調べる耐力診断について「危険を伴うことがあります」とも注意しました。自分の塀を押して確かめようとしないでください。
鉄筋探査機も、使えば安心という道具ではありません。一般社団法人日本非破壊検査工業会は、点検する技術者を「コンクリート構造物の配筋探査の知識・技量のある者」と条件づけています。
同会は資格試験の合格者が所属する企業のリストも公開していました。誰が使うかで結果の信頼性が変わる道具です。
ブロック塀の厚さと目隠しの度合いで決まる上限
塀の中身が確認できたとしても、載せられるフェンスの高さには上限があります。しかもその上限は「どれくらい目隠ししたいか」で変わり、目隠しを強くするほど載せられる高さは減るのです。
上限は3つ重なります。全体の高さ2.2m以下、ブロック部分もフェンス部分もそれぞれ1.2m以下、そして換算高さ1.6m以下です。
厚さで先に切られる条件
高さの計算に入る前に、ブロックの厚さで判定が終わることがあります。LIXILの高尺フェンス用の取付説明書(フェンスAB 高尺用・2024年12月版)を見てください。ブロックに施工する場合の条件は「厚さ15cm以上の重量ブロック(JIS A 5406の区分16(C種)以上)」でした。
ブロックメーカー側の資料は、さらに手前で線を引いています。よく使われる厚さ120mmの化粧ブロック(正味の厚さ100mm)は、金属製フェンス付きの塀には使えません。
株式会社マチダコーポレーションの製品設計・施工ガイド(2025年2月版)が、日本建築学会の規準としてそう整理しています。目隠しフェンスを載せるなら、厚さ150mm(正味120mm以上)の化粧ブロックが必要という読み方になります。
注意が要るのは「JIS A 5406の区分16(C種)」のほうです。これは製品が造られたときの圧縮強さの区分で、製品記号で決まります。
既にある古い塀がこの区分かどうかを見た目から確定できるとは、公的資料にもメーカー資料にも書かれていません。厚さはメジャーで測れますが、区分は測れないのです。
目隠しにすると載せられる高さが減る
目隠しのフェンスにすると、載せられる高さはメッシュのおよそ半分になります。なぜそうなるのかは、日本建築学会の「コンクリートブロック塀設計規準」をたどると分かります。
同規準は、ブロックの上にフェンスを連続して載せた塀を「連続フェンス塀」と呼びました。条件は、全体の高さ2.2m以下、ブロック部分1.2m以下、フェンス部分1.2m以下、そして「換算高さ1.6m以下」です。
換算高さは「ブロック塀の高さ+フェンス部分の加算高さ」で計算します。この加算高さが、フェンスの風の通りやすさで変わるのです。メッシュや格子のように隙間が多いものは小さく、目隠しやルーバーのように塞がっているものは大きくなります。
| フェンス部分の高さ | メッシュ・格子 | その中間 | 目隠し・ルーバー |
|---|---|---|---|
| 0.6m以下 | 0.2m | 0.4m | 0.5m |
| 0.6m超〜0.8m | 0.3m | 0.5m | 0.6m |
| 0.8m超〜1.0m | 0.4m | 0.6m | 0.8m |
| 1.0m超〜1.2m | 0.5m | 0.8m | 1.0m |
規準の図に載っている例で比べると効き方が見えます。加算高さが同じ0.5mになる組み合わせは、メッシュフェンスなら高さ1.2mまで、目隠しフェンスなら高さ0.6mまで。同じ0.5mの加算で、載せられるフェンスの高さが半分になります。
具体的に当てはめましょう。今の塀が0.85mあるとして、メッシュフェンスなら1.2mを載せても換算高さは1.35mに収まります。同じ塀に高さ1.2mの目隠しフェンスを載せると加算高さは1.0m、換算高さは1.85mで1.6mを超えました。
目隠ししたいという希望そのものが、残せるブロックの高さを最もきつく縛るということです。
もうひとつ、連続フェンス塀では「換算高さをそのブロック塀の高さとみなして、基礎や配筋を決定する」とされています。フェンスを載せた瞬間、その塀はもっと高い塀として設計しなければならないという考え方です。今の塀は今の高さのために造られているので、上に載せることは造られたときの前提から外れる変更になります。
2.2mが何の制限なのかを分ける
「ブロックとフェンスの合計は2.2mまで」という説明の出どころは、資料によって違います。同じ数字なのに、根拠として示されているものが一致していません。
| 資料 | 書かれ方 |
|---|---|
| 建築基準法施行令第62条の8第一号 | 「補強コンクリートブロック造の塀」の高さは2.2m以下。フェンス単体についての規定ではない |
| LIXILの取付説明書 | 「ブロック塀(フェンス含む)総高さは2.2m以下で施工してください」。日本建築学会の設計基準に触れている |
| 三協アルミの製品リリース(2023年3月29日) | 「建築基準法により、ブロック+フェンスの高さは2200mm以下と定められています」と記載 |
施行令が定めているのは、あくまでブロックを積んだ塀の高さです。第62条の8はブロックを積んだ塀についての条文なので、地面に穴を掘ってコンクリートで固める独立基礎のアルミフェンス単体は、この条文の対象ではありません。
押さえておけばよいのは「ブロックの上に載せるなら2.2mが上限」という結論です。ただし、フェンスの高さの話全般に2.2mが効くと思い込むと、次章の独立基礎という選択肢を自分で消してしまいます。
塀を残さない場合に選べる3つの道
塀を残せないと分かったときの行き先は、大きく3つです。当サイトが浜松市・磐田市の7社の公式施工事例38件を2026年9月19日から20日にかけて確認したところ、既存のブロックを残して使ったのは4件、新しく積んだのが8件、撤去したのが7件でした(1件の工事で複数に当てはまるものがあります)。
この7社38件では、残すより造り直すほうが多いという分布でした。
| 選べる道 | 工事の中身 | 向いている場合 | 注意すること |
|---|---|---|---|
| 上部を何段か撤去 | 塀の上を切って低くし、残した天端に柱を立てる | 塀の下のほうが健全で、低い目隠しで足りる | 低くしても控壁・鉄筋・基礎の不足は残る |
| 塀を作り直す | 必要な厚さ・配筋・基礎でブロックを積み直す | 境界ぎりぎりに立てたい。掘る工事を減らしたい | ブロックの上に載せられるフェンスの高さに上限がある |
| 独立基礎で立てる | 柱1本ごとに地面へ穴を掘り、コンクリートで固める | 高いフェンスで一気に隠したい | 柱ごとに最大600×600×700mmの穴を掘る |
上部を何段か撤去して低くする
掲載事例には、既存ブロック塀の上部3段をカットして残した天端(塀の一番上の面)を加工し柱を設置した例と、6段積みの上部を2か所で撤去した例がありました。後者には、割れたブロックを新しいものに交換した記録も残っています。
低くすれば安全になる、とは言い切れません。鳥取市は補助制度のQ&Aで、控壁がない塀の高さを2.2mから1.2mへ下げる改修を補助の対象外としました。
天端の仕上げ方と、露出した縦筋の扱いは、公的資料にも業界団体の資料にも手順が示されていません。
施行令第62条の8は、壁の一番上と基礎に横筋を配置し、縦筋の先をそこへかぎ掛けして留めることを求めています。上部を切れば、元の一番上にあった横筋とかぎ掛けは失われます。実際にどう処理するかは施工会社の判断です。
塀を作り直してフェンスを載せる
ブロックを新しく積んだ事例は、掲載事例のなかで最も多い8件でした。撤去して作り直した例も含めて、浜松市の事例はブロック塀撤去・フェンス変更の比較で条件ごとに見比べられます。
メーカー側の製品も、この数年でこちらへ動いています。YKK APは2020年4月にブロック2段積みと高さ1,400mm・1,600mmのフェンスを組み合わせる形の商品群を発売しました。三協アルミは2023年4月に、高さ1,400mm・1,600mmの形材フェンス2商品へ「ブロック施工納まり」を追加しています。
三協アルミのリリースは、それまでブロックの上に設置できるフェンスは最大高さ1,200mmまでで、高さが必要ならブロックを積み増して対応していたと説明しました。低いブロックの上に高いフェンスを載せる形が、商品として選べるようになったということです。
塀をやめて独立基礎で立てる
LIXILの多段柱の取付説明書(2021年3月版)に載る独立基礎の寸法は、柱の呼称T-20で幅600mm×奥行600mm×深さ700mmでした。説明書の表にある7種類のうち、いちばん大きい穴になる寸法です。ブロック塀の高さ制限からは外れますが、そのぶん掘る穴は大きくなります。
同じ説明書には「柱はブロックに施工しないでください。高尺のため強い風圧を受け、飛散事故の原因になります」という禁止事項も書かれていました。柱を継いで高さを出す形は、ブロックの上では選べないということです。
三協アルミが「ブロック施工納まり」の利点として挙げているのも、この裏返しでした。深く穴を掘らずに施工でき、独立基礎より隣地境界線の近くへ寄せて設置できる、としています。
業者に見てもらう前に用意すること
ここまでの内容を、そのまま使える形にまとめました。外観の5点を記録し、塀の生い立ちを分かる範囲で調べておくと、現地を見てもらったときの話が具体的になります。
必要な道具は、メジャーとカメラだけです。
外観の5点を写真と寸法で記録する
記録するのは、業者に渡すためではありません。「自分はここまで確認した。ここから先は分からない」と伝えるための材料です。
| 記録するもの | 具体的に何を |
|---|---|
| 寸法3つ | 地面から塀の一番上までの高さ/塀の厚さ/控壁がある場合はその間隔 |
| 写真3枚 | 塀の全体(離れた位置から。傾きが分かる)/足元(基礎が見えるか)/気になる傷みの部分 |
| 傷みのメモ | ひび割れの有無と幅、欠け、錆びた汁のあと、傾き、ぐらつき |
| 高低差 | 道路と庭の高さの差。段差があれば、どちらが何センチ高いか |
| 隠したい範囲 | どこからの視線を、どの高さまで遮りたいか |
傷みには、判定の目安になる数値が公表されています。一般財団法人日本建築防災協会が作成した耐震診断の方法が、それです(国土交通大臣が2019年1月1日に認定)。健全性が確保できていないと判定する基準は次のとおりです。
- ひび割れ幅1.0mm以上
- 組積材の破損、目地部の欠損
- 著しい風化、表面からの錆汁
- 傾斜5度以上
- ぐらつきがあり、安定性に欠ける状態
当てはまるものがあれば、上に載せる話の前に塀そのものの相談になります。
また「隠したい範囲」を忘れないでください。理由は第3章のとおりです。「とりあえず何か載せたい」ではなく「道路から立った人の目線を遮りたい」まで決めておきましょう。
塀の生い立ちを分かる範囲で調べる
いつ造られた塀かが分かると、当時どの基準があったかを確認できます。建築基準法施行令の改正の経過は文部科学省が公開しており、時期によって求められていたものが違いました。
| 造られた時期 | 補強コンクリートブロック造の塀に当時求められていたこと |
|---|---|
| 1971年1月より前 | 規定そのものがなかった。鉄筋・控壁・基礎は法令上求められていない |
| 1971年1月〜1981年5月 | 高さ3m以下/控壁は長さ3.2m以下ごと/鉄筋は径9mm以上を縦横80cm以下/基礎の丈35cm以上・根入れ30cm以上 |
| 1981年6月以降 | 高さ2.2m以下/控壁は長さ3.4m以下ごとに変更(現在まで数値は同じ) |
1981年6月の改正は、宮城県沖地震などの被害を踏まえたものです。ただしこの経過から言えるのは「いつの基準で造られた可能性があるか」までで、「築何年以上なら危険」とは言えません。第2章の高槻市の塀は1974年に造られていますが、問題になったのは年数ではなく、鉄筋の径と継ぎ方と錆びでした。
造った時期が分からない場合も、それ自体が伝える価値のある情報です。鳥取市は補助制度のQ&Aで、既存の擁壁や側溝の上に塀がある場合を挙げています。基礎としての構造強度や差し筋(下の構造物から突き出して塀とつなぐ鉄筋)が「不確か」で安全性の確認ができないときは、補助の対象になりません。
確認できないこと自体が、判断の材料として扱われているのです。
地中の情報は、公開情報からはほとんど取れません。当サイトが浜松市・磐田市の7社の公式施工事例38件を2026年9月19日から20日にかけて確認したところ、ブロックに関わる工事は18件ありました。そのうち、地中の基礎をどう扱ったかが書かれていたのは1件だけです。
自分の塀の地中を知るには、現地で見てもらうしかありません。
補助制度は市区町村で条件が違う
塀を低くしたり撤去したりするなら、住んでいる市区町村に補助制度があるかを確認してください。国土交通省の集計(令和6年4月1日現在)では、全国1,741市区町村のうち826、割合にして47%に制度があります。ただし地域差が極端で、同じ集計では富山県・静岡県・鳥取県・愛媛県は県内すべての市町村に制度がある一方、京都府と沖縄県は0、北海道は179市町村のうち1つだけでした。
条件も自治体ごとに違います。とくに「工事のあとに残してよい塀の高さ」は、そろっていません。
| 自治体 | 工事後に残せる高さ |
|---|---|
| 鳥取市 | 60cm以下(残す部分に基礎があり、点検表で安全性が確認できる場合のみ) |
| 大阪市 | 80cm未満となるよう撤去 |
| 大田区(東京) | フェンスの下に残す基礎コンクリート・レンガ等が路面から60cm以下(対象は通学路・特定緊急輸送道路の沿道のみ) |
| 福岡市 | 工事完了後に残る塀が1m未満 |
60cm・80cm未満・1m未満と割れました。これらは法令の基準ではなく、各自治体が補助を出す条件です。「残すなら60cmまで」といった数字を全国共通のルールとして受け取らないでください。
なぜ60cmなのかを説明している自治体もあります。鳥取市は「地震により転倒した際に児童の命に係わる被害がでるおそれがある塀の高さを60cmと仮定して高さを設置しています(転倒時に頭にブロック塀が当たらない高さ)」と書いていました。数字の意味が分かると、自分の家の前の道を誰が通るかを考える手がかりになります。
点検を誰が行うかも決まっていることがあります。鳥取市の場合、点検表に署名できるのは建築士とブロック塀診断士(公益社団法人日本エクステリア建設業協会の資格)だけでした。
誰が点検するかも含めて、お住まいの市区町村の建築指導や住宅の担当課で確認してください。
まとめ
ブロック塀の上にフェンスを載せられるかは、外観だけでは決まりません。国土交通省の通知は点検を二段階に分け、鉄筋の接合・定着・基礎の根入れは「ブロックを一部取り外して」確認するものとしています。
高槻市の事故では、外から分かったのは高さと控壁の不足まででした。鉄筋の径が8mmを上回らなかったことも、空洞の中で継いであることも、解体して初めて確定しています。
まず外観の5点を寸法と写真で記録し、隠したい範囲を決めてください。目隠しの度合いが、残せるブロックの高さを最もきつく縛ります。そのうえで、地中のことは現地で見てもらう前提で相談してください。
記録する場所は見積準備メモが使えます。