「毎年の剪定がきつくなってきた。生垣をやめてフェンスにしたいけれど、切るだけならそんなに高くないはず」。毛虫や落ち葉で近所に気を使うのも重なって、そんな理由で費用を調べ始めた方は少なくありません。
先にお伝えします。生垣をフェンスに変える費用は、幹を切るだけなのか根まで掘り起こすのかという撤去の中身で決まります。この2つは公的な仕様書でも別の工事として定義されていて、含まれる作業がまるで違うのです。
この記事を読めば、見積もりを5つの項目に分けて出してもらい、同じ条件で比べられるようになるはずです。工事を決める前に自治体へ確認しておくことも分かります。
生垣をフェンスに変える費用は撤去の中身で決まる
「生垣を撤去してフェンスに」という同じ言葉でも、工事の中身は2通りあります。幹を地面ぎわで切るだけか、根まで掘り起こすか。この違いが費用を大きく分けます。
そして公開されている施工例の金額からは、撤去にいくらかかったのかを取り出せません。理由を順に見ていきます。
伐採と抜根は別の工事として定義されている
国土交通省の「公園緑地工事共通仕様書」は、樹木を片づける作業を伐採と抜根に分けて定義しています。
伐採については「樹木の幹を現況地盤際で切断し、建設発生木材として処分しなければならない」。つまり地面のきわで切って、出た幹や枝を処分するところまでです。根は地面の中に残ります。
抜根はこう書かれています。「根株を切断、掘取りのうえ撤去し、根株を掘り取った穴は、土砂で埋戻さなければならない。また、掘り取った根株は建設発生木材として処分しなければならない」。
この2つは公的な仕様書の上でも別の工種です。見積もりを頼むときに「撤去」とだけ伝えると、どちらの前提で金額が出てくるか分かりません。
抜根には掘る・運ぶ・埋め戻すが含まれる
抜根には、伐採にはない工程が3つ上乗せされます。根株を掘り取る、空いた穴を土砂で埋め戻す、掘り取った根株を処分する、の3つです。
| 工程 | 伐採 | 抜根 |
|---|---|---|
| 幹を切る | あり | あり |
| 根株を掘り取る | なし | あり |
| 掘った穴を土砂で埋め戻す | なし | あり |
| 切った幹・枝の処分 | あり | あり |
| 掘り取った根株の処分 | なし | あり |
埋め戻しには土そのものと、その手間がかかります。見積もりに埋戻しの項目が見当たらないときは、どう扱うのかを確認してください。
掘る作業には機械が要ることもあります。会計検査院の報告には、道路建設工事で根を除去する作業の積算として、バックホウやブルドーザで掘り、ダンプトラックで運ぶという内容が記録されています。住宅の庭にそのまま当てはまる基準ではありませんが、機械が敷地に入れるか、トラックを停められるかが費用に効いてくる点は同じです。
公開されている施工価格から撤去費は取り出せない
施工会社が公開している事例の金額を見ても、撤去にいくらかかったのかは分かりません。当サイトが浜松市・磐田市の7社の公式施工事例38件を2026年9月19日時点で確認したところ、生垣や樹木の撤去に関わる工事は14件で、価格が公表されていたのは8件。その8件すべてに、フェンス以外の工事が含まれていました。
抜根までしたのかどうかも、ほとんどの事例に書かれていません。金額を比べる前に、どこまでやるのかをそろえる必要があるということです。
そもそも外構工事には、公的に確認できる全国の平均費用がありません。相場を探すより、自分の生垣で「どこまでやるか」を決めて見積もりを取るほうが早いのです。地域の実例は浜松市の生垣撤去・フェンス変更の施工例と磐田市の施工例で、撤去の範囲ごとに見比べられます。
切った生垣と根の処分が誰の責任になるか
切った生垣を自分でごみに出せると考えていると、見積もりの金額に驚くことになります。工事で出た木は、家庭から出るごみとは扱いが違うからです。
しかも同じ木でも、どんな工事の一部として出たかで処分のルートが変わります。
工事の中身で廃棄物の区分が変わる
剪定だけを頼んだときに出る枝と、フェンスを新しく作る工事の一部として出た伐採木では、法律上の区分が別になるのです。
環境省の審議会が2007年に示した区分の案では、「その他の木くず(剪定枝・伐採木、流木など)」が一般廃棄物に整理されています。一方、廃棄物処理法の施行令第2条第2号は、木くずのうち「建設業に係るもの(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものに限る。)」を産業廃棄物と定めています。
ここで効いてくるのが、フェンスが工作物にあたるという点です。建設業者が請け負う工事として生垣を撤去してフェンスを立てるなら、そこで出た伐採木や根株は産業廃棄物の側に入るのです。処分のルートも費用も、剪定だけを頼む場合とは変わります。
自治体も区分で線を引いています。鹿児島市は、剪定を業者に頼んだ場合について「業者が剪定した枝は収集しません」と公式に明記しました。
排出する責任は原則として元請業者
建設工事で出た廃棄物を出す責任は、工事を請け負った元請業者にあります。根拠は廃棄物処理法第21条の3です。
厚生省の通知「建設工事等から生ずる廃棄物の適正処理について」(平成11年3月23日 衛産20号)も、「建設工事等における排出事業者には、原則として元請業者が該当する。」と整理しています。
同じ「切った枝」でも、頼み方によって扱いが変わります。
| 剪定だけを頼んだ場合 | フェンス新設工事に伴う場合 | |
|---|---|---|
| 出るものの区分 | 自治体の案内に従う(一般廃棄物として扱われることがある) | 工事から出た産業廃棄物 |
| 処分する責任者 | 自治体の区分により分かれる | 元請業者(廃棄物処理法第21条の3) |
| 見積書での立ち位置 | 剪定作業の費用に含まれることが多い | 解体・廃棄物処理費という費目に立つ |
「自分で運べば安くなるのでは」と考える方もいますが、工事に伴って出たものは元請業者が出す扱いです。処分費は工事の見積もりに含まれる前提で考えてください。自治体によって受け入れの線引きが違うので、気になる場合は工事を頼む前に確認してみてください。
見積書では解体・廃棄物処理費に入る
処分費は、見積書の「解体・廃棄物処理費」という費目に入ります。一般社団法人住宅リフォーム推進協議会が公開している参考書式「住宅リフォーム工事御見積書」には、工事項目とは別にこの行があらかじめ印刷されています。
合計欄は「工事価格(税抜き)」「取引に係る消費税等」「合計(税込)」の3段です。受け取った見積書の金額が税抜きか税込みかは、ここで確かめられます。
処分費がこの費目に立っているか、それとも工事費の中に混ざっているかを見ると、業者がどこまで見込んでいるかの見当がつきます。
「撤去費込み」とだけ書かれていたら、伐採までなのか抜根までなのか、処分はどこまで含むのかを聞いてください。ここを確かめないまま金額だけを比べても、比較になりません。
工事を決める前に自治体へ確認する3点
生垣を切る前に、市区町村で確認しておくことが3つあります。土地によっては、垣やさくの形そのものが決められていたり、木を切るのに許可が要ったりするからです。
確認先は都市計画やみどりの担当課です。どれも土地ごとに違うので、住所を伝えて調べてもらいます。
地区計画で垣やさくが制限されていないか
地区計画という制度で、垣やさくの構造そのものを制限できることになっています。都市計画法施行令の第7条の6が「法第十二条の五第七項第二号の建築物等に関する事項で政令で定めるものは、垣又はさくの構造の制限とする」と定めているからです。
つまり「この地区では生垣にすること」といったルールが、土地に付いている場合があります。
該当するかどうかは、住所ごとに調べないと分かりません。生垣をやめる前提で話を進める前に、まずここを確認してください。
緑地協定は後から買った人にも効く
緑地協定は、認可が公告されたあとにその土地を買った人にも効力が及びます。都市緑地法で定められた仕組みで、協定の中に「保全又は設置する垣又はさくの構造」を含められます。
注意したいのは、この協定が土地に付いてくることです。都市緑地法第50条は、認可の公告があった緑地協定について「その公告のあつた後において当該緑地協定区域内の土地所有者等となつた者(略)に対しても、その効力があるものとする」としています。かっこの中には、協定に合意しなかった人から土地を引き継いだ場合の除外が書かれています。
家を買ったときに自分が結んだ覚えがなくても、縛られていることがあるということです。中古で買った家や、親から引き継いだ家では特に確かめておきたい点でしょう。
保存樹と景観重要樹木は扱いが違う
木を切るのに許可が要るかどうかは、どの制度の対象かで変わります。よく混同されるので、4つの型に分けて整理しました。
| 制度 | 木を切るときに必要なこと |
|---|---|
| 保存樹(都市の美観風致を維持するための樹木の保存に関する法律) | 伐採の許可規定は無い。届出が要るのは所有者が変わったときと、滅失・枯死したときだけ。保存は努力義務 |
| 景観重要樹木(景観法) | 許可が必要。違反は30万円以下の罰金 |
| 特別緑地保全地区(都市緑地法) | 木竹の伐採に都道府県知事等の許可が必要 |
| 緑地保全地域(都市緑地法) | あらかじめ届出が必要 |
景観法第31条は「何人も、景観行政団体の長の許可を受けなければ、景観重要樹木の伐採又は移植をしてはならない」と定めています。一方、保存樹の法律には伐採の許可規定も罰則もありません。
「保存樹だから切れない」と思い込む必要はなく、逆に「指定されていないから自由」とも限りません。指定の有無は担当課で確認できます。
境界にある生垣を切るときの決まり
生垣が隣との境界に沿っている場合、枝と根では扱いが違います。民法が別々に定めているからです。
そして工事で隣の敷地を使う必要があるなら、事前の通知も要ります。
隣から越えてきた枝は2023年に変わった
隣の木の枝が自分の敷地へ越えてきたとき、原則は所有者に切ってもらうことです。民法第233条は「土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる」としています。
2023年4月1日の改正で、自分で切れる場合が3つ加わりました。所有者に切るよう伝えたのに相当の期間内に切らないとき、所有者が分からないか所在が分からないとき、急迫の事情があるときです。
「相当の期間」について、八千代市は「事案にもよりますが、基本的には2週間程度」と説明しています。越えてきた枝でも、いきなり切ってよいわけではないということです。
根は枝と扱いが違う
根については、同じ第233条の第4項が「隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる」と定めています。枝のような手続きは要りません。
生垣の撤去では、この違いが実務に効いてきます。地面の中で根が越えているぶんは切り取れますが、地上の枝は所有者との話が先です。
自分の敷地の中にある自分の生垣なら、この条文は関係ありません。問題になるのは、境界線がどこかがはっきりしない場合です。
境界の生垣は所有者を先に確かめる
境界に沿った生垣は、誰のものかが曖昧なことがあります。工事を頼む前に、境界の位置と生垣の所有者を確かめてください。
隣の敷地を使う必要があるなら、民法第209条の手続きも関わります。境界付近で工作物を築造するために隣地を使うときは、原則としてあらかじめ目的・日時・場所・方法を通知します。
事前の通知が難しいときは、使い始めたあとすみやかに伝える形でもよいとされました。なお住家に立ち入るには居住者の承諾が要ります。
何が分からないかで、相談する先が変わります。
| 分からないこと | 相談する先 |
|---|---|
| 境界の位置そのもの | 土地家屋調査士 |
| 越境した枝を切ってよいか | 弁護士 |
生垣の跡にフェンスを立てるときの条件
生垣を片づけたあとの地面に、そのままフェンスを立てられるとは限りません。フェンスは地面の中に基礎を作って支えるので、所定の寸法で掘れるかどうかを柱を立てる位置ごとに確かめる必要があります。
そして生垣と同じ高さをフェンスで出そうとすると、基礎は思っているより大きくなるのです。
フェンスの基礎は地盤の強さで決まる
LIXILは、フェンスALの基礎の寸法を地耐力(地面がどれだけ重さを支えられるか)別に示しています。取付説明書には、地耐力ごとの基礎寸法表が載っていました。
同社は、設置場所の地耐力に合う寸法を表から選ぶよう求めています。そのうえで、基礎は指定の寸法以上にすること、地盤が軟らかければコンクリートの量を増やすことも求めました。
生垣の跡地は、根を抜いたあとに土を埋め戻した状態です。埋め戻した土は締まっていないことがあるので、柱を立てる位置の地盤を現地で見てもらってください。
「伐採だけにして費用を抑えよう」という判断ができるかどうかは、柱を立てる位置に何が残っているかで変わります。現地を見てもらったうえで決めてください。
生垣と同じ高さを出すと基礎が大きくなる
高さを出すと、基礎の寸法は段違いに大きくなります。LIXILの公表寸法を、通常の高さのフェンスと、柱を継いで高さを出す多段柱とで並べました。T-◯はフェンス本体の高さの呼称で、地面からの全高とは別です。
| 仕様 | 独立基礎1か所の寸法(幅×奥行×深さ) |
|---|---|
| フェンスAL T-8(本体約0.8m)・地盤が軟らかいとき(地耐力30kN/㎡) | 200×200×450mm |
| 2段柱 T-12(本体約1.2m) | 400×400×600mm |
| 2段柱 T-20(本体約2.0m) | 600×600×700mm |
生垣は1.5mから2mほどの高さがあることが多いので、同じ高さをLIXILの2段柱で出すなら下の2行が目安です。掘る穴の大きさが変わるぶん、コンクリートの量も、運び出す土の量も増えます。
生垣は根が広がって自分を支えているのに対し、フェンスを支えるのは柱1本ごとの基礎です。支え方が違うぶん、地面に対する工事の中身も変わります。高さをどこまで求めるかが、費用の分かれ目になるのはこのためです。
見積もりを分けて出してもらう
見積もりは、伐採・抜根・埋戻し・処分・フェンス本体と基礎の5項目に分けて出してもらいます。こうすれば、業者ごとの金額を同じ条件で比べられます。
| 分けてもらう項目 | 確認すること |
|---|---|
| 伐採 | 幹をどこで切るか。切った幹・枝の量 |
| 抜根 | 根株を掘り取る範囲。機械を使うかどうか |
| 埋戻し | 掘った穴に入れる土と、その手間 |
| 処分 | 解体・廃棄物処理費として立っているか |
| フェンス本体と基礎 | 商品と高さ、基礎の寸法 |
この5項目がそろえば、複数の会社へ同じ条件で相談できるでしょう。書き出す場所に迷う方は見積準備メモをお使いください。工事会社への送信や、氏名・電話番号の入力はありません。
まとめ
生垣をフェンスに変える費用は、撤去の中身で決まります。伐採は幹を地面ぎわで切るだけ、抜根は根株を掘り取って穴を埋め戻すところまで。公的な仕様書でも別の工事として定義されています。
切った木と根の処分は、工事の一部として出たなら元請業者の責任になり、自分で捨てることはできません。見積書では「解体・廃棄物処理費」に立ちます。
まず市区町村の都市計画やみどりの担当課で、地区計画・緑地協定・樹木の指定の3点を確認してください。そのうえで、伐採・抜根・埋戻し・処分・フェンス本体と基礎の5項目に分けて見積もりを頼みます。書き出す場所は見積準備メモが使えます。